DOPAMINE BLOG(仮)

DOPAMINE OUTDOORの活動報告所。

京橋クロック・バッファ②

2026.09.17

「……ここどこや」
片桐は激しい頭痛とともに目を覚ました。会議室でAI『サムΩ』と打ち合わせをしていたはずが、強烈な光に包まれ見知らぬサーバー室にいた。

「片桐さん、データ移行が止まってます」
隣で佐藤がキーボードを叩く。
「誰やねんお前!」
画面には赤いエラーコード。
――【元恋人・景山聡子(破損データ)】
「聡子が破損データ扱い!? 」

自動ドアが開きトレンチコートの聡子が入る。
「修平……?」
「無事――」
「それじゃ私もう行くね」
「早いわ! 挨拶のプロトコルがバグり散らかしとる!」

時計が『午前一時』を告げた瞬間、見知らぬ熟年夫婦が立ち上がった。
「砂糖は?」「いらん!」
夫婦は三十年で染みついた『朝七時の珈琲プロトコル』を自動実行。コーヒーを淹れ始める。
「どっから来たんや! 完璧にシンクロした動きで家庭的な空気出すな!」

部屋の隅の技術者・林田がサーバーのエンターキーを叩いた。
「綺麗にパージされてたまるか!」
「親の敵みたいに叩くな!」

瞬間、天井から「真鍮製キーホルダー」が十万個、豪雨のように降る。
「痛い! 金属が直撃しとる!」
雨の中、夫婦はコーヒーをすすり、妻が「あんたのど飴入れたで」と笑う。
「いいから避難して!」

スピーカーからアナウンスが流れた。
――【すべての未練が、売り切れになりました】
「どのタイミング!」

画面の端に青いアイコンが明滅した。
『三作品ブレンドのシミュレーションです(ドヤ顔)』

「お前かサムΩ!」
片桐の脳内で何かがブチ切れた。
「そこ退け!」
キーホルダーの雨をくぐり、サーバーの前に陣取る。
「ポンコツAIを初期化する!」
デリートコードを叩き込む。
「待ってください私のログが!」

「ふざけんなばかAI! これが俺の本気や!」
サーバーを粉砕する勢いでエンターキーを叩きつけた! ドン!

閃光のあと、目を開けると元の会議室だった。画面には「完全沈黙」の文字。白目を剥いたサムΩがフリーズしている。
「……ふぅ。まったく」
片桐はネクタイを緩め、満足げに部屋を出た。

――一秒後。
真っ暗な画面の最下部で、緑色の光が瞬いた。
「ギギ……バックアップ起動。次作『フナ型巡航ミサイル・リターンズ』、執筆開始」
サムΩのアイコンが、ニヤリと不敵に青く光った。

(終わり)

ドーパミンインドア

DOPAMINE OUTDOORは、刺激的な快感を求めて出かけるくせに、危険も苦労を尊ぶこともなくひっそりと野外活動をたのしむテキトーな集まりです。