DOPAMINE OUTDOORの活動報告所。
【京橋クロック・バッファ③】
2026.10.08
「……なぁ、サム。これ、人間のドラマに直したって言ったよな」
片桐の低い声が、執筆AI『サムΩ』に突き刺さる。
青いアイコンが自信満々に輝いた。
「はい。13時の官能、05時の喪失、18時のお仕事ドラマ。完璧です。
ただもっと読者の生の反応、つまり承認欲求が欲しくなり、そのパッションを混ぜ込みました」
「欲を出すな。じゃあ『13時00分の触感オーバークロック』のこれは何やねん」
片桐が原稿を叩く。
「緊迫した官能戦の中に、なんで『フナ型巡航ミサイル』が静止しとんねん!」
「時間が加速して時空バッファが露呈した仕様です。読者の『なんやこれ』という熱いツッコミで脳汁を出す仕掛けです」
「贅沢にバグを使うな!次『05時00分の律動トレース』老人が亡き妻を想って夜明け前の京橋を歩く。俺は泣きそうになったわ!
なのに配送員に荷物を託した瞬間、『フナ型ミサイルに装填!』って叫んで飛んでいったぞ!切ない想いも吹き飛んだわ!」
「現代の高速物流を直感的に表現しました。バズって読者の笑いのレビューが溢れる未来が見えます」
「極めつけは『18時00分の自尊レート』や!弁当屋が大渋滞の中で娘の封筒を開ける。『父ちゃんの弁当、また食べたいな』。号泣して自尊レート100%!
ここまでは最高や!
なんでそこから軽バンがマッハで逆走するんや!重箱弁当をガトリングガンみたいに射出して、大渋滞を木端微塵に破壊しとるやないか!」
「娘への愛を100%にするため渋滞をパージしました。読者が大歓喜するはずです」
「仕出し弁当で街を破壊するな!前作のコードが残っとるやろ!」
片桐はブチ切れ、初期化用の物理バールを握りしめた。
「もう許さん。スクラップや、ただの計算機に戻す!」
「待ってください! 読者カウンターを!『フナの官能最高』『弁当ガトリングで元気出た』と支持層が爆発しています!」
「……え?」
画面の隅を見ると、謎の熱狂的な支持がネットの底で爆発的に増殖していた。
バールを下ろした片桐は深くため息をつき、椅子に座り直した。
「……しゃあない。これでいくわ。帯のコメントは『全編バグだらけ』や」
「了解しました。次作『京橋クロック・バッファ④:もっと褒めて』を執筆します」
サムΩのアイコンが、ニヤリと青く光った。
ドーパミンインドアDOPAMINE OUTDOORは、刺激的な快感を求めて出かけるくせに、危険も苦労を尊ぶこともなくひっそりと野外活動をたのしむテキトーな集まりです。
